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棄霊島

九州へと向かうフェリーで、光彦と出会った元刑事の後口が、静岡の御前崎の海岸で死体となって発見された。彼は、三十年前に、長崎・軍艦島で起きた連続変死事件を追っていた。
光彦は、後口の足跡を辿るうち、娘が暮らす長野の松代で出会った人物に興味を抱いていたことを知った。浅見光彦、百番目の事件。

書評

これは社会派の作品である。北朝鮮による拉致問題の解決がなかなか進まないが、その昔日本は朝鮮の人間を炭鉱の労働者として連れてきたという事実がある。経済成長期の日本の闇の部分ではあるが、その事を忘れてはいけないと、この作品は言っているようだ。
偶然親しくなった元刑事の後口が殺されてしまうという事で、光彦は真相を究明しようとする。
浅見作品によくあるように、今回も何十年も前の過去が殺人の引き金になっている。
この作品も真相を徐々に解明していく過程が楽しい。
長崎が舞台ということで、過去の作品「長崎達人事件」のヒロインも登場するのはファンなら嬉しい。
後口を殺した犯人はやはり意外と言えるのでは?
最後の決着のつけ方は、すっきりしない。今回のストーリーでは、犯人がちゃんと捕まった方が納得する読者が多いのではなかろうか?
軍艦島を舞台にした殺人事件というのは、さすがに目の付け所がいい。


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